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巻頭言
「生活の場」という視点
著者: 佐々木雄司12
所属機関: 1獨協大学経済学部 2保健センター
ページ範囲:P.338 - P.339
文献購入ページに移動 最近,「生活の場」という概念にとり憑かれている1)。またそれと連動してCommunity Mental HealthのCommunityとは何だろうとあらためて考え始めた。直接の契機となったのは,1992年春から,獨協大学の専任教員となったことである。転勤常習犯の私にとっても,この2年間の体験は,二重の意味で強烈で新鮮であった。一つは,文科系大学での初勤務という“文科ショック”。他の一つは,保健センターでの学生への支援上の問題である。前者を要約すると,医療は,一般社会からみれば特異な世界なのかもしれないことの再認識。そしてこのことは,医学,特に公衆衛生・精神衛生が国民すべてのものになるためには,もっと工夫せねばならないとの反省に連なる。これらについては触れる機会も別にあろうが,本小論は,以下述べる後者である。
実は,私にとって強烈な“転勤ショック”は2回目である。1回目は1966年9月,臨床精神医学つまり「医療の場」から,新設の東京都立精神衛生センターに転じた時である。いくつかの“驚き”の中の最たるものは,投薬治療ができない,つまり狭義の“治療者”になれないことであった。以来四半世紀,東京・埼玉の精神衛生センター,東大・琉球大の精神衛生学教室と,「精神衛生」を表看板とした世界に埋没してきた。では,今回の大学保健センターへの転身は,何を意味し,いかなるショックをもたらしたのであろうか。
実は,私にとって強烈な“転勤ショック”は2回目である。1回目は1966年9月,臨床精神医学つまり「医療の場」から,新設の東京都立精神衛生センターに転じた時である。いくつかの“驚き”の中の最たるものは,投薬治療ができない,つまり狭義の“治療者”になれないことであった。以来四半世紀,東京・埼玉の精神衛生センター,東大・琉球大の精神衛生学教室と,「精神衛生」を表看板とした世界に埋没してきた。では,今回の大学保健センターへの転身は,何を意味し,いかなるショックをもたらしたのであろうか。
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