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文献詳細

雑誌文献

精神医学36巻4号

1994年04月発行

文献概要

研究と報告

「Frégoliの錯覚」を呈した精神分裂病の1例

著者: 堀孝文1 松坂尚2 今井公文2 鈴木利人1 白石博康1

所属機関: 1筑波大学臨床医学系精神医学 2筑波大学付属病院精神神経科

ページ範囲:P.367 - P.373

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 【抄録】 「Frégoliの錯覚」を呈した精神分裂病の15歳女子例を報告した。13歳頃から洗浄強迫が認められ,その後「F」という青年に対しての妄想知覚を認め,次第に「F」を迫害者として定位するようになった。ついには「F」が様々な人になりすまして本人の周囲に出没し,「Frégoliの錯覚」を呈するに至った。本例は「Frégoliの錯覚」の典型的な例と考えられた。本例において洗浄強迫は,単に汚れに触れることを回避していたのみならず,人間同士の「触れ合い」を回避するという,患者と世界の間における患者のあり方を現していると考えられた。本例は「自己の個別化の危機」が根底にあり,「汝」の他者性の不成立の結果,個々の「汝」を認識できなくなった事態と,未開人の思惟形式に特徴とされる融即の判断(jugement par participation)が「Frégoliの錯覚」の発展に深くかかわったものと考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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