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感情障害に対する心理教育的アプローチ—UCLAにおける行動的家族療法の実際
著者: 上原徹1 横山知行1 後藤雅博2
所属機関: 1新潟大学医学部精神医学教室 2新潟県立精神保健センター
ページ範囲:P.415 - P.421
文献購入ページに移動精神障害の患者や家族に対する心理教育は,生物学的病因論と心理社会的援助論を統合する形で生まれてきたアプローチである。現在分裂病に対しては,英米圏を中心に本邦でもこのアプローチが行われ,その効果も実証的に検証されつつある。しかし,感情障害に対する心理教育の試みは意外なほど少ない。その理由として,感情障害は分裂病に比べて生物学的モデルで説明できる部分が多く,病相はより短期間で,予後が良好とされてきたことが挙げられるだろう。ところが近年の予後研究は,感情障害の予後は必ずしも楽観できるものではなく,難治遷延例が稀ならずみられることを示している6)。このような難治遷延例については,薬物療法の検討,合併身体疾患の問題,配偶者との関係,社会的な援助体制などを視野に入れた多元的な治療的アプローチが必要となる6)。その家族レベルでの治療的介入法として,心理教育的アプローチは考慮されるべき方法の1つであろう。
今回筆者の1人は,双極性感情障害に対する心理教育的家族療法を精力的に行っている施設の1っであるUCLAにおいて,その研修に参加する機会を得た。本稿では彼らの理論的基盤と具体的な手法を紹介し,感情障害に対する家族介入全般についての概説を加えた。また,本邦において感情障害に対する心理教育を導入するに当たって,その可能性と問題点についても簡単に触れた。
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