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文献詳細

雑誌文献

精神医学36巻4号

1994年04月発行

文献概要

「精神医学」への手紙

Letter—levomepromazine投与中に夜間,下背部痛を生じた1例

著者: 寺尾岳12

所属機関: 1日立健康管理センタ 2産業医科大学精神医学

ページ範囲:P.441 - P.441

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 症例は,37歳男性。抑うつ状態のため,1991年2月より日立健康管理センタで加療されている。1993年5月,抑うつ状態が増悪したため,amoxapineを100mg/日へ増量し,levomepromazine(以下,LPと略す:夕食後と就寝前に分割投与)50mg/日とalprazolam 0.4mg/日を加えた。その結果,抑うつ状態は軽快したものの,7月下旬に「明け方4時頃に,背中の下のほうがギューツと締めつけられるように痛くなり目が醒めるようになった。痛みのために立ち上がって,しばらくすると痛みが消える。今まで飲んだことのない薬(筆者注:LPであることを確認した)が始まってからこういうことが起こるようになったので,この薬のせいと思いこれだけをやめてみたら痛みはなくなった。その後,念のため再び飲んでみたら痛くなりました。」と訴えた。この時点で,LPによる痛みと内科的疾患による放散痛の両者を疑った。後者に関して,内科医による診察と腹部エコー,消化管内視鏡検査など諸検査を行ったが異常を認めず,LPのみを中止して6カ月間経過を追ったが痛みの再発は認めていない。
 本症例において,LPと下背部痛の関連は明らかである。杉原ら1)も,LP投与中に痛みを主とした異常知覚が夜間に出現した9例を認めている。杉原ら1)は痛みの生じる機序に関し,LPの抗ヒスタミン作用と貧血や肥満による末梢循環不全の関与を推定している。本症例において,痛みが臥床時に出現し起立により消失したことは,臥床により圧迫された下背部の末梢循環不全が同部位のLP停滞を惹起したため,痛みが同部位に生じた可能性を示唆している。うつ病患者にLPを就寝前投与することは比較的多いと思われるが,このような患者が下背部痛や腰痛を訴えた場合,整形外科的病態あるいは内科的病態による痛みやうつ病の身体症状としての痛みのほかに,LPによる痛みも念頭に置く必要がある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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