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特集 精神疾患の新しい診断分類
[資料]我が国におけるICD-10 DCRの実地試行
著者: 高田浩一1 岡崎祐士1 中根允文1
所属機関: 1長崎大学医学部精神神経科学教室(精神保健に関する研究・訓練のためのWHO協力センター)
ページ範囲:P.499 - P.504
文献購入ページに移動ICDシステムにおいても,症候学的によりhomogenousな対象群を必要とするような研究のためには,一般用とは別に研究用の操作的診断基準を提供することが必要であるとの考えから,ICD-10第Ⅴ章に対応する研究用診断基準(DCR-10)が作られることとなった。Feighnerらの基準,SpitzerらのRDC,DSM-ⅢやDSM-Ⅲ-Rなどの一連の診断基準がこのDCRに影響を与えたことは明らかである。DCRの前書きにも「ICD-10の『臨床記述と診断ガイドライン』を作成した専門家により,多国間での臨床実地試験の結果と,多数の専門家からの助言や,WPAなど種々の国際的専門家集団,とりわけ米国精神医学会におけるDSM-ⅢやⅢ-R作成委員会などの意見を取り入れて作成された」とある1)。
今回,WHOが企画した国際的多施設共同研究としてのDCR-10の実地試行の主な目的は,①DCRが様々なタイプの精神障害を,どの程度的確に記述できているかを評価する。使い勝手の良さ,診断の確信度,および症状を完全に網羅しているか否かを評価する。②DCRとICD-10の「診断ガイドライン」との一致の度合をチェックする。③診断の評価者間信頼性および診断に寄与する他の基準が存在するか否かの評定を行う。以上の3点である。
なお,今回の実地試行で使用されたのは,DCR草案第2版(1990年5月)で,ICD-10の1990年5月草案に適合するように開発されたものである。日本での実施に際しては,DCR草案第2版の長崎大学医学部精神神経科学教室の訳による日本語版(1990年11月)2)が用いられた。
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