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文献詳細

雑誌文献

精神医学36巻5号

1994年05月発行

研究と報告

非痴呆老人脳アミロイドβタンパク沈着の精神医学的意義—老年期精神病の1形態学的背景

著者: 池田研二12 羽賀千恵1 藤嶋敏一2 加瀬光一2 水谷喜彦3

所属機関: 1東京都精神医学総合研究所神経病理部門 2東京都立松沢病院精神科 3東京都立松沢病院神経内科

ページ範囲:P.531 - P.537

文献概要

 【抄録】 非痴呆者の大脳皮質にはアミロイドβタンパク沈着(AmD)が種々の程度に認められ老齢化とともに出現頻度と程度が増大するが,その精神医学的検討はなされていない。多数の非痴呆例の海馬を通るメセナミン銀染色半球切片の検討を通して抽出されたAmDが中等度に出現する6症例と高度に出現する7症例の病歴を再調査した結果,中等度群中1/6例,高度群中5/7例に精神症状が確認され,その内容はせん妄状態(4例),幻覚・妄想状態(2例,うち1例は経過中にせん妄状態あり),うつ状態(1例)であった。この結果はAmDが出現しないかごく少数であった対照群(12例)と比較して際立っており,精神症状を伴う中等度〜高度AmD群が70歳以上の高齢者で構成されていたことから①AmDは老年期精神病の器質的要因の1つとなりうる,②これらの症例の一部はsubclinicalな段階のアルツハイマー型老年痴呆にあり,精神症状は初期症状であるという2つの可能性を指摘し,実際には広範,高度のAmD症例群はアルツハイマー型痴呆の発生母体であるとともに老年期精神病にとどまる症例群が混在していると考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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