icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学36巻6号

1994年06月発行

文献概要

特集 精神医学と生物科学のクロストーク

随意的眼球運動の神経機構

著者: 彦坂興秀1

所属機関: 1順天堂大学医学部第一生理学教室

ページ範囲:P.587 - P.591

文献購入ページに移動
■眼球サッケードの発生装置
 眼球運動に関係する脳の領域はたくさんある。大脳皮質の様々な部位を電気刺激すると目が反対側に動く。四肢の運動は中心前回にある運動野あるいはその周辺の限局した領域の刺激でのみ起こるのとは対照的である。眼球運動が誘発される領域は,大脳皮質では,前頭眼野や頭頂連合野,それに補足運動野の一部,皮質下では,視床の髄板内核,大脳基底核の黒質網様部と尾状核,などである。これらの領域から発した神経情報は,主に,上丘に収束し,それから脳幹網様体の水平性と垂直性の眼球運動発生装置に送られる。では,上丘はどのような機能を担っているのだろうか。
 上丘は,系統発生のもとをたどると視蓋と呼ばれ,例えばカエルでは中枢神経の最高位に位置している。虫を見て,それに頭と体を向け,ひと飲みにするというカエルにとってもっとも基本的な行動は,この上丘によって支配されている。サルや,おそらくヒトでも,上丘はこのような意味で重要である。上丘は層状の構造をしている。浅層には網膜から直接の線維投射があり,中間層からは脳幹網様体や脊髄に視蓋脊髄路という太い線維束が下りている。視野のどこかにものが現れると,それとは反対側の上丘浅層のある一群のニューロンがそれに応答して発火する。これに引き続いて,動物は,そして私たちも,その視覚対象に目や頭を向けるだろう。この時起こる眼球運動はサッケードである。このような眼球や頭の運動が起こるのは,この時,視覚性に応答した浅層の細胞のすぐ下の中間層のニューロンが激しくバースト状に活動して,その情報が脳幹や脊髄に送られるためである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?