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文献詳細

雑誌文献

精神医学36巻7号

1994年07月発行

文献概要

展望

抗痴呆薬開発の現況

著者: 本間昭1

所属機関: 1東京都老人総合研究所精神医学部門

ページ範囲:P.676 - P.687

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■はじめに
 本稿のテーマは抗痴呆薬の開発の現状について展望を行うことであるが,この場合の痴呆はアルツハイマー型痴呆(AD)を指すことが多い。すでに知られているようにADは老年期にみられる代表的な痴呆性疾患であり,65歳以上の人口に占める痴呆性老人数についての大塚と清水の推計69)では1990年で6.7%であった割合が,今後30年後には実数にしておおよそ274万人となることが推定されている。疫学調査結果の比較51)では,従来我が国では最も多い痴呆性疾患であった脳血管性痴呆に対する本疾患の相対的な増加が示されており,今後我が国においても本疾患が脳血管性痴呆を凌ぎ老年期における主要な痴呆性疾患となる可能性が考えられる。本疾患の原因はまだ解明されていないが,近年,諸外国においてと同様に我が国においても本疾患の中核症状である認知機能障害を対象とした主としてコリン仮説に基づく治療の試みが積極的に進められている。1993年3月には米国食品医薬品局(FDA)においてAChE阻害薬であるtetrahydroaminoacridine(THA)のアルツハイマー型痴呆(AD)に対する臨床的有効性を検討するための第3回諮問委員会で承認勧告がなされ,それを踏まえて1993年9月に治療薬として承認されたことはまだ記憶に新しい。承認にはアルツハイマー病協会などを含めた社会的な影響も大きいといわれているが,世界で初めてのAD治療薬となった。1986年にSummersら88)がTHAのADの中核症状である認知機能障害に対する劇的な効果を示す論文を発表して以来8年が経過している。
 ここでは,抗痴呆薬開発の背景となるADの生化学的変化については触れず,現在の開発に至る歴史的な経緯,薬効評価上の方法論的問題および我が国と諸外国における開発の現状について臨床的な立場より述べる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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