icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学36巻8号

1994年08月発行

展望

精神障害と犯罪

著者: 山上皓1

所属機関: 1東京医科歯科大学難治疾患研究所

ページ範囲:P.786 - P.797

文献概要

■はじめに
 筆者らは最近,精神障害者の犯罪の被害者やその遺族に接する機会をよく持つが,そこであらためて,彼らの心に残された傷の深さを知らされることが多い。犯行が唐突で理不尽であること,加害者の責任を問うことさえ許されないという事実,加害者のみの人権擁護を主張する報道機関や医療関係者の姿勢,そしてあまりに簡単に認められる加害者の退院など,精神障害者の犯行に伴う諸事情が,被害者・遺族の気持をうっ屈させ,いっそう深く傷つけているのである。
 我が国の精神障害犯罪者処遇体制には重大な欠陥があるが,精神科医の間には,まだ,精神障害と犯罪に関する話題をタブー視する風潮があり,その改善にはなお多くの困難があるように見える。しかし,あらためていうまでもなく,精神障害者の犯行は,本人はもちろんのこと,その家族や地域社会にまで,計り知れないほど深い傷跡を残し,その後の治療に重大な障害をもたらすものである。したがって,精神障害者の犯罪の予防への努力は,本来,精神科医療活動の重要な一部として位置づけられるべきものであるはずである。
 そのような立場から,筆者は本論を通じて我が国の精神障害犯罪者の実態を明らかにするよう努め,諸兄に対応策をご検討いただく際の資料の1つとなりうるよう心がけたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら