文献詳細
展望
文献概要
■はじめに
筆者らは最近,精神障害者の犯罪の被害者やその遺族に接する機会をよく持つが,そこであらためて,彼らの心に残された傷の深さを知らされることが多い。犯行が唐突で理不尽であること,加害者の責任を問うことさえ許されないという事実,加害者のみの人権擁護を主張する報道機関や医療関係者の姿勢,そしてあまりに簡単に認められる加害者の退院など,精神障害者の犯行に伴う諸事情が,被害者・遺族の気持をうっ屈させ,いっそう深く傷つけているのである。
我が国の精神障害犯罪者処遇体制には重大な欠陥があるが,精神科医の間には,まだ,精神障害と犯罪に関する話題をタブー視する風潮があり,その改善にはなお多くの困難があるように見える。しかし,あらためていうまでもなく,精神障害者の犯行は,本人はもちろんのこと,その家族や地域社会にまで,計り知れないほど深い傷跡を残し,その後の治療に重大な障害をもたらすものである。したがって,精神障害者の犯罪の予防への努力は,本来,精神科医療活動の重要な一部として位置づけられるべきものであるはずである。
そのような立場から,筆者は本論を通じて我が国の精神障害犯罪者の実態を明らかにするよう努め,諸兄に対応策をご検討いただく際の資料の1つとなりうるよう心がけたい。
筆者らは最近,精神障害者の犯罪の被害者やその遺族に接する機会をよく持つが,そこであらためて,彼らの心に残された傷の深さを知らされることが多い。犯行が唐突で理不尽であること,加害者の責任を問うことさえ許されないという事実,加害者のみの人権擁護を主張する報道機関や医療関係者の姿勢,そしてあまりに簡単に認められる加害者の退院など,精神障害者の犯行に伴う諸事情が,被害者・遺族の気持をうっ屈させ,いっそう深く傷つけているのである。
我が国の精神障害犯罪者処遇体制には重大な欠陥があるが,精神科医の間には,まだ,精神障害と犯罪に関する話題をタブー視する風潮があり,その改善にはなお多くの困難があるように見える。しかし,あらためていうまでもなく,精神障害者の犯行は,本人はもちろんのこと,その家族や地域社会にまで,計り知れないほど深い傷跡を残し,その後の治療に重大な障害をもたらすものである。したがって,精神障害者の犯罪の予防への努力は,本来,精神科医療活動の重要な一部として位置づけられるべきものであるはずである。
そのような立場から,筆者は本論を通じて我が国の精神障害犯罪者の実態を明らかにするよう努め,諸兄に対応策をご検討いただく際の資料の1つとなりうるよう心がけたい。
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