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研究と報告
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【抄録】 今回我々は1984年から1992年の9年間に国立久里浜病院を受診し,DSM-Ⅲ-Rの診断基準を満たした10代のアルコール依存症者10例(平均年齢17.9歳,男性8例,女性2例)の特徴,臨床経過,家族背景などについて検討し,以下の知見を得た。①アルコールのみに依存していた群(アルコール嗜癖群)は3例のみで,アルコール以外に他の嗜癖も合併していた群(多因子嗜癖群)が大半を占めた。②アルコール単独群では患者個人の障害が発症の大きな要因になっていたのに対し,多因子嗜癖群では家族問題が重篤で,その結果としての対人関係障害が発症の主たる要因であるように思われた。③10代のアルコール依存症者における依存形成は急速で,初飲から受診に至るまでの平均期間は3.2年であった。④アルコール関連臓器障害は概して軽度なものであった。⑤10例中7例は治療が中断となり,10代のアルコール依存症者は治療困難な一群であると考えられた。
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