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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

アルコール依存症に出現したペラグラ脳症と考えられる1例—Nicotinic acid deficiency encephalopathyに関する臨床的考察

著者: 高橋正1 島崎正次1 新井平伊1 井上令一1

所属機関: 1順天堂大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.821 - P.828

 【抄録】 我々は,アルコール依存症の長期経過中に,アルコール離脱症候群の振戦せん妄やアメンチアなどの遷延性軽度意識障害,持続する下痢や軟便などの消化器症状,失調性歩行,筋強剛,深部反射亢進,原始反射,嚥下障害,構語障害などの多彩な神経学的所見を示し,臨床診断学的にペラグラ脳症と考えられた症例を経験した。本症例は,ニコチン酸アミドの大量投与により劇的な症状全般の改善を示し,Jolliffeらの報告したニコチン酸欠乏性脳症の症例に類似していた。ペラグラ脳症剖検例の報告はこれまでにも散見されるが,最近の診断機器による所見を含めた臨床的観点に重点を置いた報告はない。典型的なペラグラの3徴を示さず,皮膚症状や消化器症状を欠くタイプも稀ではないことから,ペラグラ脳症の臨床診断は容易ではない。本症例を通じペラグラ脳症の臨床的考察を行い,検査や治療と合わせてここに報告する。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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