icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学36巻8号

1994年08月発行

研究と報告

自閉症にみられる相貌的知覚と妄想知覚—情動的コミュニケーションの成り立ちとその意義

著者: 小林隆児1

所属機関: 1東海大学健康科学部設置準備室

ページ範囲:P.829 - P.836

文献概要

 【抄録】 青年期自閉症の1例の治療を通して,自閉症に特有な知覚様態として相貌的知覚と生き生きした情動vitality affectの存在を指摘した。乳幼児期に特徴的なこのような知覚様態が,自閉症では加齢を経ても活発に作動しやすいことが推測された。そのため彼らの環境世界は容易に相貌性を帯びて変容していくと考えられた。このようにして知覚された環境世界を他者と共有化するための機能を果たすべき言語によって意味づけることが彼らには非常に困難であることが,自閉症における認知障害の本質的な問題であることを指摘した。もし彼らが開かれた共同性からの撤退を余儀なくされる状況に置かれたならば,知覚した環境世界に対して彼ら独自の意味づけを行うことによって,妄想知覚とみなせる精神病理現象が生起するに至ると推論された。このような自閉症の知覚様態の特性は,自閉症において情動的コミュニケーションが成立するための基本的能力の存在を意味するとともに,その成立を可能にするような治療者側の関与のあり方の重要性を示唆していた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら