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文献詳細

雑誌文献

精神医学36巻9号

1994年09月発行

文献概要

研究と報告

一酸化炭素の慢性被曝の関与が考えられた初老期発症痴呆の1例

著者: 中島公博1 渡部正行1 中野倫仁1 石垣博美1 池本真美1 川崎峰雄2 高畑直彦1

所属機関: 1札幌医科大学神経精神科 2あしりべつ病院

ページ範囲:P.963 - P.968

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 【抄録】 一酸化炭素の慢性被曝の関与が考えられた初老期発症痴呆の1例を経験した。症例は51歳女性で人格変化を伴う痴呆と意欲低下,情動鈍麻などの症状によって特徴づけられる。4年にわたる臨床経過と検査結果から,症状は進行性ではなく,脳MRIでの萎縮性変化と多発梗塞巣ならびに脳SPECTでの後頭頭頂葉,側頭葉の集積低下などの所見は経時的変化に乏しかった。また発症以前の家庭状況から,自宅のボイラーの不完全燃焼があり,同時期に一致して患者同様,家族にも頭痛,めまいなどの症状が存在していた。診断としては多発梗塞性痴呆,アルツハイマー型痴呆が疑われたが,積極的に支持する要素に乏しく,一酸化炭素の慢性曝露により,精神神経症状が何らかの修飾を受けた可能性を考えた。慢性一酸化炭素中毒の臨床報告例はなく,臨床例の蓄積が望まれるが,このような視点から検討することも必要ではないかと考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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