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文献詳細

雑誌文献

精神医学37巻1号

1995年01月発行

文献概要

特集 分裂病者の社会復帰—新しい展開

デイケア活動の評価—予後調査より

著者: 西園昌久1

所属機関: 1福岡大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.37 - P.43

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■精神科デイケア活動の目標―居場所性と施設特異性
 精神科デイケアの目標とするところは,主として精神分裂病者の社会復帰にあるが,病前の社会適応度,分裂病による障害度あるいは患者の家族や社会的支持などといった患者側の要因と精神科デイケア側の治療あるいは訓練的要因によってその内容はいろいろとなってくる。両者の関係で精神科デイケア施設の種類を挙げると表1に示すとおりであろう。精神科デイケアは,主としてWHOのdisability,social handicapを改善することを目的にプログラムを組み活動するのであるが,それも,施設の種類の区別を超えて愚者に心の安らぎを提供することでは共通する。入院した精神分裂病患者は,超長期在院し社会との接触を断たれた人たちを除いてほとんどは早期の退院を希望する。ところが,精神症状が軽快して退院したからといって自宅が居心地のよい所とは限らない。陰性症状のため,すぐには社会復帰できない場合,患者の社会を恐れる迫害的構えと家族の過剰な期待や逆に脱価値化が織りなすEE的態度とによって家庭では特有の居づらさが体験されている。
 デイケアに導入することに成功すると患者たちは,デイケアに居心地のよさを発見する。分裂病者にとって心地よい居場所を提供することは,患者が自己存在を肯定される世界を認知することになり,社会とのつながりを可能にする出発と考えられる。ほとんどの保健所デイケアが週1回程度の“憩いの場”的ケアであっても患者には好ましいものとして受け入れられ,それがそれ以上の病状悪化や絶望の淵に追い込むことの予防になっているのもそのような理由からであろう。しかし,精神科デイケアには,入院治療の代行,あるいは,早期退院した患者の治療,つまり,医学的・精神医学的モデルに比重があり,これに訓練的プログラムを併用する大学精神科や精神病院の施設もあれば,退院から社会への移行的ケア,なかんずく職業訓練的プログラムに比重を置く,精神病院,公的精神科デイケアなどの施設もある。つまり,施設によって活動プログラムに共通するもの以外に施設特異性があるのである。また,デイケアではスタッフのチーム活動のもとで運営されるのが普通であるが,それも精神科医が関与する質と量とによってチーム活動の内容も変わってくる。したがって,精神科デイケアの効果を論じる時にはどのような障害を持つ患者にどのような活動プログラムを行ったかが問題になるのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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