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文献詳細

雑誌文献

精神医学37巻1号

1995年01月発行

「精神医学」への手紙

Letter—carbamazepineによる味覚障害

著者: 横山尚洋1

所属機関: 1東京都立大塚病院

ページ範囲:P.110 - P.110

文献概要

 carbamazepine(CBZ)による味覚障害については諸外国で数例の報告はあるが,日本ではあまり知られていない。CBZによって生じたと思われる味覚障害の症例を経験したので報告する。症例は41歳男性で,調理関係の仕事に従事し味覚には敏感である。20歳ごろから年に数回程度の複雑部分発作があったが未治療で経過していた。41歳時に調理中に発作を起こし火傷を負ったため入院した。頭部MRIでは異常を認めず,脳波で左側頭葉に棘波が認められ側頭葉てんかんとの診断でCBZ400mg/日の投与が開始された。4週間後に味覚消失(ageusia)を訴えるようになった。調理の際,味が全くわからなくなり非常に困ったという。スープの塩加減なども全くわからず嗅覚によって見当をつけて味をつけた。砂糖,梅干し,辛子などの味もしないとのことであった。検査で塩,甘,酸,苦の味覚消失が確認された。この時のCBZの血中濃度は9.8μg/mlであった。CBZの投与中止後数日で味覚は速やかに回復し,約10日後には正常になった。
 薬物による味覚障害は患者からの訴えが少なく軽いものは見落とされることが多く報告例は多くはない。CBZによる味覚障害については高度のものは少なく,予後はよく投与中止後に速やかに回復するようである。本例の場合はCBZ投与との因果関係が強く考えられること,味覚障害が高度であったこと,職業が調理師という味覚の機微を必要とする仕事であり,早期に発見されたことが特徴であろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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