短報
反復性短期うつ病における尿中メラトニン代謝産物の日内リズム異常
著者:
中島聡1
山田尚登1
大井健1
所属機関:
1滋賀医科大学精神医学講座
ページ範囲:P.1217 - P.1219
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Angstらは,20歳代の青年を対象とした前方視的研究Zurich Studyから,DSM-Ⅲ-Rの大うつ病の重症度の診断基準は満たすが抑うつを示す期間が短いため大うつ病の診断基準を満たさない一群があることを見い出し,反復性短期うつ病(Recurrent Brief Depression;RBD)という新しいうつ病の亜型の存在を提唱した2)。以来,諸外国ではRBDに関する疫学的研究が数多く行われており,DSM-Ⅳには“今後の研究のための基準案”の中に含められ1),ICD-10ではF38.10反復性短期うつ病性障害(Recurrent Brief Depressive Disorder)の診断基準が付け加えられている11)。これまでに,諸外国においてこの疾患に関する疫学的研究が数多く行われているが3〜7),本邦においてはわずかの症例報告がなされているだけである8)。また,RBDでは抑うつエピソードが1月に1回以上の頻度で反復することから,その背景に生体リズム異常が示唆されるが,この疾患の生物学的観点からの研究はこれまでほとんどなされていない。
今回我々はRBDの診断基準を満たす1例を経験し,日内リズムの生理学的指標として尿中メラトニン代謝産物6-sulphatoxymelatonin(6 SM)を測定し,病相と6SM分泌の日内変動の異常との間に興味深い関係を見いだしたので報告する。