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文献詳細

雑誌文献

精神医学37巻12号

1995年12月発行

文献概要

短報

飲用後8か月を経て意識障害,てんかん発作を呈した有機リン中毒の1例

著者: 中村眞12 國見由佳理13 福田守男14 上坂信哉15 上野修一16 佐野輝16 松井博1

所属機関: 1新居浜精神衛生研究所附属新居浜精神病院 2現,藤田保健衛生大学医学部精神医学教室 3現,大府病院 4現,桶狭間病院 5現,黒野病院 6現,愛媛大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.1323 - P.1326

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 有機リン剤系農薬は,パラチオン系農薬と異なり,哺乳類に対して比較的毒性が低く,事故による急性中毒は非常に少ない6,9)。しかし,自殺目的や過誤で飲用した場合,多くの市販製品は数十ml以上で致死量に達する毒物であり,重篤な急性中毒症状を呈して時には死亡する。有機リン剤はアセチルコリンエステラーゼ酵素活性を阻害し,急性有機リン剤中毒では体内のアセチルコリンが蓄積する4)。アセチルコリンは,副交感神経(節前および節後線維),交感神経(節前線維),神経筋接合部,さらに中枢神経系での神経伝達物質であり,これらに対するアセチルコリン過剰の症候が出現する。末梢組織では,ムスカリン作用として平滑筋の収縮,外分泌の亢進,徐脈を引き起こし,ニコチン作用として筋攣縮,筋力低下を引き起こす。急性症状はアセチルコリンの過剰によるものがほとんどであるが,亜急性から慢性期にかけてintermediate syndromeや遅発性神経障害を起こすことが知られる6,9)。今回我々は,自殺目的で有機リン剤を飲用した症例を経験したので報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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