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文献詳細

雑誌文献

精神医学37巻12号

1995年12月発行

文献概要

短報

気分障害と精神分裂病の世代間伝達の特徴についての検討—表現促進の有無

著者: 今村明12 岡崎祐士2 藤丸浩輔3 福迫貴弘1 浜田旭2 辻田高宏4 松本純隆5 中根允文2 新川詔夫4

所属機関: 1長崎県立大村病院 2長崎大学医学部精神神経科学教室 3国立長崎中央病院 4長崎大学医学部原研遺伝学教室 5道ノ尾病院

ページ範囲:P.1327 - P.1330

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 近年の気分障害や精神分裂病(以下分裂病と表記する)のDNAマーカーによる多発家系を対象とする連鎖研究は,初期の陽性結果を除いて,大部分が陰性の結果という困難に直面している。これらは方法上の制約からlod score法は優性遺伝を,同胞対法sib pair methodは劣性遺伝を仮定して行われている。陰性結果の原因としてはいくつかの理由が考えられるが,これらの疾患の遺伝的伝達様式が不明であるために,異質な家系を総和するための感度の低下も1つの要因と考えられる。したがって連鎖研究の困難を打開する1つの方法として,特徴ある家系内伝達を示す亜群に的を絞り感度を上げる工夫が必要である。
 ところで,優性遺伝において分離比を乱す要因として,浸透率などと共に表現促進anticipationがある。世代が下がるにつれて,発症年齢が早期化し重症化する現象が知られており,これを表現促進という。この数年,表現促進に対応する分子遺伝学的な実体として3塩基反復配列(TripletrepeatsまたはTrinucleotide repeat sequences)の増大という現象が見い出された。この特徴を示すトリプレット・リピート病として,現在までに脆弱X症候群,筋緊張性ジストロフィー,ハンチントン病,などの疾患が知られている。先行研究においては,気分障害や分裂病に対しても表現促進が存在する可能性が示唆されている。しかしなお,その種の研究は極めて少ない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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