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研究と報告
Anorexia nervosaの1症例—食物の細分化と「デジタル化(数値化)傾向」という視点から
著者: 花澤寿1
所属機関: 1帝京大学医学部付属市原病院精神科
ページ範囲:P.187 - P.193
文献購入ページに移動 【抄録】発症から約2年を経過し,自ら入院治療を希望して受診したanorexia nervosaの1症例の特徴および治療経過を報告した。長期化した飢餓状態の結果生じた強い食衝動の亢進と,患者の未解決な病理に基づく肥満恐怖との間のジレンマにより患者は混乱し,強い焦燥感を抱いていた。行動制限と摂取カロリーの設定により,亢進した食衝動の適度なコントロールを提供することが患者の心理的安定をもたらし,良好な治療関係を形成することができた。特徴的な食行動異常として「食物の細分化」がみられたが,これをanorexia nervosaの持つ「あいまいなもの,多様な意味を持った事がらを,数字へと単純化し,ないし明確に数として数えられるような形に置き換え,あるいは変換しようとする傾向」の現れとしてとらえ,「デジタル化(数値化)傾向」と名づけて概念化した。この概念はanorexia nervosaの病態理解と治療に有用であると考えられた。
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