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文献概要
私のカルテから
Retrospectiveに追跡しえた小児期分裂病の成人例
著者: 絵内利啓1
所属機関: 1香川大学教育学部
ページ範囲:P.216 - P.217
文献購入ページに移動 数年前のことになるが,筆者が嘱託医をしている某精薄施設の1入所者について管轄の精神薄弱者更生相談所の心理判定員から,調査を依頼された。それは,精神遅滞とされている同症例の5年ごとの療育手帳更新の際の知能検査が,入所当初に比べて検査の度に低下しており,単純な精神発達遅滞とは考え難いので調べてもらいたいというものであった。当時筆者は同施設の嘱託医を引き受けて1年に満たず,目立たない存在であった本症例についてはこの時が初対面であった。
初診時,本症例は31歳,視線は合うが,返答はなく,無為荘然とした様子であった。担当指導員の話によると,入所当時も会話は乏しかったが,簡単な読み書きは可能であった。また,虚空を指さしたり,唾を吐いたりなどの行動がみられていたとのことであった。母親の話からは小学生時代に教育相談を受けたことと中学生時代に筆者の所属していた大学付属病院の精神科で投薬を受けていたことがあったが,病気の説明は受けていなかったということがわかった。そこで児童相談所の教育相談資料と病院外来カルテを調査することとなった。以下の病歴は,そこからretrospectiveに得られたものの抜粋である。なお,知能検査法はすべて鈴木ビネー式によるものである。
初診時,本症例は31歳,視線は合うが,返答はなく,無為荘然とした様子であった。担当指導員の話によると,入所当時も会話は乏しかったが,簡単な読み書きは可能であった。また,虚空を指さしたり,唾を吐いたりなどの行動がみられていたとのことであった。母親の話からは小学生時代に教育相談を受けたことと中学生時代に筆者の所属していた大学付属病院の精神科で投薬を受けていたことがあったが,病気の説明は受けていなかったということがわかった。そこで児童相談所の教育相談資料と病院外来カルテを調査することとなった。以下の病歴は,そこからretrospectiveに得られたものの抜粋である。なお,知能検査法はすべて鈴木ビネー式によるものである。
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