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「精神医学」への手紙
Letter—柏瀬宏隆氏のレターに思う—疏と疎について/Letter—柏瀬宏隆氏のレターに思う—「疏通性/疎通性」の問題によせて
著者: 西丸四方1 岡田靖雄2
所属機関: 1信州大学 2精神科医療史研究会
ページ範囲:P.560 - P.561
文献購入ページに移動戦後変わったのかと古い説文解字(AD 100)を見ると「疏は通也」としてあって疎のことはない。しかし史記(BC 4)には「苗は疎に植えよ」としてある。高田忠周という説文会の親方の大系漢字明解には「疎は疏の俗」としてあり,康煕字典(1716)にもそう書いてある。藤堂明保の字引には束はたばねる,疏や流のツクリの下縦三本は水(羊水),上部は胎児の頭で,出産の時にするっと赤ん坊が通ることらしい。束はタバになってエトランジェ,よそ者をよせつけぬことか,マバラに一人ずついることか。疎は疏と画数は同じなのでめんどうなので一つにしてしまったのか。1989年の日本精神神経学会「精神神経学用語集」では疏通と疎隔が区別されていてさすがはと思うのだが,この用語集にも誤りはあり,かんしゃく発作tempertantrum(L)としてあって,ラテン語だというらしいが,このいかにもラテン語らしい言葉は,temperはラテン語にはなく,temperoぐあいよくかきまぜるからtemperamentum気質ができ,tempus時間と関係があるらしい。血,粘,黒胆,胆を時間をかけてかきまぜてうまく気質をこね上げるというのである。Oxford English Dictionaryというばかでかい辞書にもtantrumは語源不明としてある。ある本にはウェールス語だとしてあるが,Kauderwelschチンプンカンプン語は,辺境未開地ウェールス語を七面鳥のゴロゴロ言う鳴声みたいだと,妙な言葉を皆ウェールス語としてしまったので,タンタルムは擬声語でタンタラタンとかんしゃくを起こして物を投げることであるというのであろう。
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