文献詳細
研究と報告
文献概要
【抄録】カプグラ症状を呈したてんかん性精神病の1症例を報告した。症例は,右前側頭部に発作焦点を持つ側頭葉てんかんで,MRIにて右扁桃体周辺に高信号域を認めた。カプグラ症状は,抗てんかん薬治療で発作が抑制され,被害念慮が出現した後に,家族を偽ものと言って暴力をふるうことから始まり,その後,対象は物や日付にまで広がり,現実感喪失,人格変化を伴って遷延化した。文献例を含めた考察から,本症例のカプグラ症状の成因は,扁桃体の絶え間ない発作放電からもたらされる情動の変化により,対象に対して通常の親密感が感じられず,奇異な情動を伴って対象が認知されてしまうためではないかと推測された。
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