研究と報告
精神分裂病患者の顔面表情の描画
著者:
横田正夫1
時田学1
山本直示2
所属機関:
1日本大学文理学部心理学研究室
2陽和病院
ページ範囲:P.877 - P.883
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【抄録】精神分裂病患者における顔面表情の描画表現特徴を明らかにするために,分裂病患者と正常者各30名を対象に,「怒った顔」「笑った顔」を描かせる顔描画検査を実施した。分裂病患者では描かれた顔の眉,目,口は,2つの顔に共通して,いずれも水平線で表される傾向が顕著であったが,正常者では「怒った顔」は逆八字眉,凸型口,「笑った顔」は凹型口で描かれる傾向がみられた。次に描かれた顔からどのような感情が認知されるかについて調べるために,上記以外の正常者25名が,評定尺度を使って評定を行ったところ,分裂病患者の「怒った顔」からは嫌悪が,「笑った顔」からは悲しみ,喜びといった2つの感情がそれぞれ優位に認知されたが,正常者の「怒った顔」,「笑った顔」からはそれぞれ怒り,喜びが優位に認知された。このように,分裂病患者では弁別可能なように顔の部分を描き分けておらず,また顔からは適切な感情の認知もできないことが示された。