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雑誌目次

論文

精神医学38巻1号

1996年01月発行

雑誌目次

巻頭言

医療雑観

著者: 武田專

ページ範囲:P.4 - P.5

Ⅰ.精神医療
 私は1966年(昭和41年)の精神病理・精神療法学会のシンポジウムで,次のような提言をした。「従来,我が国における精神病院の精神医療の問題は,生活療法やリハビリテーションの形で,病院精神医学の分野で取り上げられてきた。一般の精神病院にあっては,少数の治療者と多数の患者たちとの間の治療関係を基本とする表層的な社会適応の回復などに重点が置かれ,ともすれば個々の患者の微妙な個性や精神力動の推移に注意の向かぬきらいがあった。
 これに対して私たちの立場は,患者個々の精神内界の変化を重視する神経症の1対1の関係に注目する,閉鎖的な交渉様式を基本としている。したがって,病院全体を精神療法的に管理するには,治療者・患者関係の構造の修正と,それに伴う治療技法や理論の修正が必要となってくる。我が国の精神医療の健全な発展を考えるならば,私たちは日本的な現実に,より積極的に適応すべきであるが,一般精神病院においてもさらに積極的に,個人精神療法の知識と経験を集団的な取扱いや病院治療に導入することが望ましい」と。

展望

臨床睡眠医学—精神科領域における最近の進歩

著者: 内山真 ,   内田直 ,   渥美義賢 ,   融道男

ページ範囲:P.6 - P.18

 ヒトの睡眠研究は,1950年代のレム睡眠の発見によって急速に進展し,初期は精神科を中心に夢と精神病の関係についての実験的研究が盛んに行われた。その後,徐々に臨床的な研究が増加し臨床症候群の発見や記載が進んだ。1980年代になり欧米を中心に睡眠障害クリニックが多く開設されるようになった。睡眠障害の臨床的重要性が,独立した疾患として,また様々な精神疾患や身体疾患の随伴症状として再認識されるようになった。1988年のKrygerらによるモノグラフ27)の出版以来,睡眠医学(sleep medicine)という言葉が一般的になり,次第に1医学分野としての地位を固めつつある。こうした発展を踏まえ1990年には睡眠障害の国際分類が作成され12),診断と治療の指針が示された。
 精神科臨床では,精神科疾患における睡眠障害のマネージメントの重要性はもとより,リエゾン・コンサルテーション精神医学の活動が盛んになるにつれ,他科から睡眠障害についてコンサルテーションを受けることも多くなっている。精神科医は最新の睡眠医学の知識を持って睡眠障害に対処することを要請される。多くの患者が睡眠障害に苦しんでいるにもかかわらず,日本において睡眠障害の臨床的重要性がまだ広く認識されておらず,睡眠障害クリニックの開設は極めて少ない。近年の睡眠医学の発展が必ずしも一般臨床に生かされていないのが現状と思われる。

研究と報告

音楽性幻聴について—自験5例からの考察

著者: 森則夫 ,   鈴木勝昭 ,   緒方慎一 ,   岩田泰秀

ページ範囲:P.19 - P.25

 【抄録】我々がこれまでに経験した音楽性幻聴の5例について述べた。4例は難聴者にみられたもので,1例は精神分裂病者の音楽性幻聴である。難聴者4例の音楽性幻聴はいずれも老年期に発症しており,いずれも耳鳴を持っていた。精神分裂病の1例は20歳頃に発症し,音楽性幻聴のほかには難聴も耳鳴もなかった。これらの症例から,難聴者では,(難聴という)感覚遮断,耳鳴,加齢に伴う脳の脆弱性や機能変化が音楽性幻聴の発症に与っていると考えられた。また,精神分裂病者の例ではその疾病過程において機能的感覚遮断が起きているのではないかと推論した。

分裂病と非定型精神病(満田)の症状と経過の相違について

著者: 林拓二 ,   安藤琢弥 ,   松岡尚子 ,   須賀英道

ページ範囲:P.27 - P.35

 【抄録】愛知医大に1982年から10年間に精神病症状を呈して入院した351名を,ICD-10と従来診断により分類して,その精神症状と経過型を比較検討し,次の結果を得た。
 (1)非定型精神病は,従来診断にしろ日本版ICD-10にしろ,急性一過性精神病(F23)と分裂感情障害(F25)とを中心に構成される。両診断の主たる差異は,従来診断では非定型精神病とされる急性精神病の遷延型と,急性分裂病様精神病(F23.2)とを,日本版ICD-10では非定型精神病から除外していることである。(2)一級症状の出現頻度は,分裂病が有意に多いとは言えず,妄想知覚は非定型精神病に若干多かった。日本版ICD-10の非定型精神病では,幻声と自我障害が有意に少なかった。(3)ICD-10の分裂病診断では,なお大きく一級症状に依拠しているが,分裂病と非定型精神病との差異は,幻声などの一級症状にではなく,もっと生物学的な意識障害や人格の退行過程に求められるべきである。

悪性症候群におけるけいれん発作について—発作後軽快した1例を中心に

著者: 熊谷浩司 ,   川口浩司 ,   豊田隆雄 ,   村田桂子

ページ範囲:P.37 - P.42

 【抄録】向精神薬の減量・中止に伴って悪性症候群を発症し,強直-間代けいれんの後,症状が劇的に改善した症例について報告した。本症例においては,抗精神病薬,抗不安薬,睡眠薬,中枢神経作用性の制吐剤・消化管運動改善剤などが,数か月間対症的に投与されていた。薬剤の減量に伴い,悪性症候群を発症したため,IVHなど補液を中心に全身管理を行い経過を観察した。第12病日,3回の強直-間代けいれんを起こし,その後約14時間の経過で症状が改善した。けいれん発作の認められた悪性症候群の報告症例と比較,検討したところ,本症例のように発作を契機に軽快が認められる症例が存在し,その経過は,ECTによる治療経過に類似していた。

特発性antecollisを合併した分裂病の1例—理学的治療の有効性について

著者: 丸井規博 ,   佐々木学

ページ範囲:P.43 - P.47

 【抄録】症例は,15歳時に精神分裂病を発症し33歳時に頸部前屈(以下antecollis)を呈した男性である。向精神薬の服用歴が発症当時の1週間しかないため,このantecollisは遅発性ジストニアとは考えられず,症候性ジストニアも否定的で,特発性ジストニアと考えられた。antecollisに対しては,頭頸部を水平位に保つ長時間の仰臥位保持療法が著効を示したが,これは随意的な仰臥位保持がantecollisという脳の異常な運動プログラムを解除するのではないかと推測された。これまでジストニアに対しては一般に理学的治療は無効とされてきたが,少なくともantecollisに対しては,仰臥位保持療法という理学的治療が有効である可能性があることを指摘した。

動物に関連した病的体験を持つ症例の臨床的検討

著者: 佐々木由佳 ,   及川暁 ,   竹内淳子 ,   鈴木廣子 ,   酒井明夫 ,   三田俊夫

ページ範囲:P.49 - P.54

 【抄録】精神病理学的体験に動物が関与することの意義については,動物からの幻声体験としての「ドリトル現象」(Denning TR, West A, 1990)以外,まだ十分な検討が行われていない。今回我々は,ドリトル現象のほか動物関連の異常体験を呈した12例について症状論的検討を試みた。その結果,これら動物関連の異常体験には,①動物のしぐさや行為を起点とする異常な意味の顕現,②そうした異常な意味が動物から人間に言語的もしくは準言語的メッセージとして伝達される,という構造が共通に認められた。ドリトル現象の特徴とされている,①重症の精神病的状態の指標となる,②患者はしばしば危険な行動に出る,③患者は後にこの体験を話すことを嫌がる,などの事項は,ドリトル現象だけではなく,他の動物関連の体験にも出現する可能性が高く,このことは,「動物と人間の間の境界が曖昧になる」というこの体験の非日常性と関連していることが推定された。

MRIを用いた精神分裂病患者の脳の形態研究—体積計測による検討

著者: 染谷康宏 ,   大久保善朗 ,   阿部哲夫 ,   浅井邦彦 ,   融道男

ページ範囲:P.55 - P.61

 【抄録】精神分裂病患者25例と健康ボランティア20例に,3次元MRIを用いて3mm厚3mm間隔で全脳を覆うT1強調画像を撮影し脳内各部位の詳細な体積測定を行った。その結果,(1)左右の側脳室,第三脳室容積が,対照群に比較し分裂病群で有意に大きかった。(2)左右の前頭葉,左右の尾状核体部,右側頭葉体積には両群に有意な差を認めなかった。(3)左側頭葉,左右の海馬体積が,対照群に比較し分裂病群で有意に小さかった。(4)陰性症状と分裂病群の右側頭葉体積に負の相関(r=-0.41)が認められた。以上より分裂病群では,海馬,脳室,左側頭葉の形態異常が認められ,陰性症状の発現には,それに加えて右側頭葉の形態異常が関与していると考えられた。

精神分裂病患者の手続き記憶

著者: 元村直靖 ,   赤木弘之 ,   竹内隆 ,   友田洋二 ,   魚橋武司

ページ範囲:P.63 - P.65

 【抄録】精神分裂病患者の手続き記憶能力について検討を加えた。16名の服薬中の精神分裂病患者と性,教育歴および年齢を統制した16名の正常対照群に対して,陳述記憶課題としてRey auditory verbal learning test(RAVLT),Rey-Osterrieth complex figure test(ROCFT)と手続き記憶課題としてdrawing skill test,reading skill testを施行した。その結果,分裂病群では,健常群と比較すると,RAVLTとROCFT,drawing skill testにおいて有意な差が認められた。このことは,服薬中の精神分裂病患者では陳述記憶の障害と運動性の手続き記憶の障害があることを示唆するものである。

線条体内包梗塞に伴い無為を呈した1例

著者: 尾関祐二 ,   加藤忠史 ,   大東祥孝 ,   成田実 ,   加藤進昌 ,   高橋三郎

ページ範囲:P.67 - P.71

 【抄録】尾状核,内包,レンズ核を含む脳梗塞に伴い,急性期に無為(abulia)を,慢性期には軽度の特徴的な失語を呈した症例を報告した。無為は,尾状核の脳梗塞で報告されているものと類似しており,その内的体験,症状に対する態度(無関心,内的葛藤の欠如)などから,うつ病における意欲低下とは区別されうるものであった。また,この症例の失語は線条体内包梗塞に特徴的な自発語の減少,失名辞,語性錯語,言語産生,流暢性の障害などにより特徴づけられる軽度の超皮質性運動失語であった。

妊娠適齢期の女性のライフ・イベント—大うつ病および恐慌性障害,全般性不安障害における比較

著者: 塩入俊樹 ,   村下淳 ,   高橋三郎

ページ範囲:P.73 - P.77

 【抄録】20歳代から40歳代までの妊娠可能な女性患者に限定して発病1年前までのライフ・イベントを調べた。対象は当科を初診した大うつ病単一エピソード(MD群71例),および恐慌性障害(PD群70例),全般性不安障害(GAD群82例)と診断された合計223例の外来女性患者とした。ライフ・イベントはPaykelのライフ・イベントスコアを用いて検討した。PD群ではライフ・イベントの頻度および重症度において他の2群に比し有意に低かった。ライフ・イベントの内容では,大うつ病では,仕事・学校における問題と出産,PD群は家庭・個人の問題,GAD群では家庭・個人の問題および本人の病気をライフ・イベントとして発症することが多かった。

ステロイド投与中にうつ状態を呈したSystemic Lupus Erythematosus患者に対するリチウムの効果—症例報告

著者: 吉村玲児 ,   寺尾岳 ,   阿部和彦

ページ範囲:P.79 - P.82

 【抄録】Systemic Lupus Erythematosus(SLE)の治療目的でprednisolone 50mg/日投与中に出現したうつ状態に対して,リチウムによる治療を行った。本症例においてはCNS lupusとの鑑別目的で種々の免疫学的検査も行った。うつ状態はリチウム 600mg/日,血中濃度0.6mEq/lで軽快したが,リチウムの中止により再燃し再投与にて軽快した。prednisolone 20mg/日へ減量後リチウムを中止した場合には精神症状の再燃はみられなかった。またリチウム投与中に重篤な副作用も認められなかった。以上のことからステロイド剤によりうつ状態が現れた場合,リチウム投与が有効な可能性があることが示唆された。

DST陽性を示したインターフェロンα誘発性精神障害の2症例—精神症状の病態発生に関する1考察

著者: 松永秀典 ,   更井正和

ページ範囲:P.83 - P.90

 【抄録】C型肝炎に対するインターフェロンα(IFNα)療法中に発生した精神障害2症例の入院治療を経験した。うち1例は,重篤な幻覚妄想状態のあと痴呆様症状が遷延するという特異な経過を示した。
 2症例の経過中にdexamethasone抑制試験(DST)を施行したところ,2症例とも,精神症状の重篤な時期にはDSTが陽性を示し,精神症状の軽快とともにDSTの陰性化を認めた。このことから,IFNα誘発性精神病の病態と躁うつ病の病態とが類似している可能性が推測された。さらに,IFNαの持つ視床下部-下垂体-副腎皮質系刺激作用が,感情障害を中心とした精神症状の誘発に関連している可能性を示唆した。

短報

Diffuse neurofibrillary tangles with calcificationの1臨床例

著者: 李鋒 ,   西村徹 ,   井関栄三 ,   小阪憲司

ページ範囲:P.91 - P.93

 Diffuse neurofibrillary tangles with calcification(石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病,以下DNTCと略す)は,以下の臨床病理学的特徴を有する症例群に対し,1992年小阪が1疾患単位として提唱した名称である2,3)。臨床的には,主に初老期に記憶障害で発症し,皮質性痴呆が緩徐に進行する。初期には精神症状を伴ったり,人格障害や言語機能の障害などの症状が混在する。進行すると,種々の神経症状が加わり,末期には失外套症候群に陥る。神経放射線学的に側頭葉や前頭葉優位の萎縮と広範な石灰化を認め,神経病理学的にも同部位の限局性萎縮とFahr病様の石灰沈着を認める。また大脳皮質に多数の神経原線維変化をみるが,老人斑やピック嗜銀球を欠く。すなわち,アルツハイマー病やピック病など既知の初老期痴呆性疾患と類似点を持つが,そのいずれとも異なる疾患である。これまでに20例ほどの報告がなされているが,池田ら1)の1例を除くと全例が剖検例である。今回我々は本疾患と考えられる1臨床例を経験したので画像所見とともに報告し,本疾患の生前診断が可能であることを指摘した。

サイロキシン(T4)が奏効したLate Luteal Phase Dysphoric Disorder(LLPDD)の1例

著者: 土屋潔 ,   小山司

ページ範囲:P.94 - P.96

 黄体後期に出現し月経開始後すみやかに寛解する,精神的ならびに身体的症状を周期的に反復する症候群は,DSM-Ⅲ-R1)でlate luteal phase dysphoric disorder(LLPDD)として定義された。これは従来の月経前緊張症の一群に相当すると考えられる。LLPDDあるいは月経前緊張症の治療には,各種ホルモン剤,ブロモクリプチン,リチウム,アルプラゾラム,クロミプラミンなど種々の薬剤が使われているが,いまだ確立された治療法はないのが現状である6,9)。また,月経前緊張症に対して,甲状腺ホルモンによる治療を行った報告もいくつかあるが3,7),投与量は報告によって様々で,有効性についての一致した見解は得られていない。今回我々は比較的高用量のサイロキシン(T4)が著効したLLPDDの1例を経験したので若干の考察を加え報告する。

ブロチゾラム過量服用後に殺人を犯し部分健忘を認めた事例

著者: 工藤行夫 ,   宮崎清 ,   武正建一

ページ範囲:P.97 - P.99

■はじめに
 睡眠導入剤として半減期の比較的短いベンゾジアゼピン誘導体が繁用されているが,その服用後に健忘ないし異常行動を呈する場合があることが知られ,新たな副作用として注目されている。我々は最近,ベンゾジアゼピン類似のチエノジアゼピン誘導体であるブロチゾラムを過量服用した後に中途覚醒して殺人を犯し,その間の行動について部分健忘を認めた事例の精神鑑定を経験したので,その概要を報告し若干の考察を加える。

憑きもの俗信牛蒡種憑依の1症例

著者: 加藤秀明 ,   白河裕志

ページ範囲:P.100 - P.102

 牛蒡種(ゴンボダネ)とは,牛蒡種筋と呼ばれる家系があって,その筋の者に憎悪や羨望などの感情を持たれると,牛蒡種の生霊が憑いて精神異常を来すとされる岐阜県飛騨地方特有の憑きもの俗信である。筆者らは先に牛蒡種憑依4例について報告3)したが,その後新たな症例を経験した。地方特有の憑きもの俗信に基づく憑依現象の発症はそれ自体稀なことであるし,前報告でみられなかった症状を呈したので,追加報告する。

抗てんかん薬がせん妄に有効であった脳血管性痴呆の1例

著者: 堀口淳 ,   助川鶴平 ,   伊賀上睦見

ページ範囲:P.103 - P.105

 痴呆患者のせん妄に対する薬物治療としては,haloperidolなどの抗精神病薬やtiaprideなどが頻用されているが,過鎮静や薬物性パーキンソニスムが発現したり,benzodiazepine系剤と同様に,眠気や脱力などのために,転倒事故などを招来することもある。今回筆者は,haloperidolなどが有効でなく,phenobarbitalとclonazepamとの併用投与がせん妄に奏効し,良好な経過が得られた脳血管性痴呆例を経験した。痴呆患者のせん妄に抗てんかん薬が奏効したという報告はなく,貴重な症例と考え報告する。

動き

「第11回国際事象関連電位会議(EPIC XI)」印象記

著者: 丹羽真一

ページ範囲:P.106 - P.108

 1995年6月25日より30日の6日間にわたり琉球大学・小椋力教授が組織委員会会長となられ,沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンションセンターにおいて「第11回国際事象関連電位会議(EPIC XI)」が開催された我が国の事象関連電位研究のパイオニアであり長年にわたり日本脳波筋電図学会理事を務められた下河内稔先生も組織委員会の名誉会長として会議の準備・運営にあたられた。
 事象関連電位(Event-Related Potential;ERP)とは知覚,認識,判断,反応準備,反応遂行などの情報処理に伴って脳波の中に現れる電位のことで,精神医学においては精神疾患の病態と治療研究に広く用いられてきている。しかし国際事象関連電位会議には精神医学のみならず神経内科学,脳神経外科学,耳鼻科学などの臨床医学,および生理学,心理学,医用電子,情報工学などの諸科学の領域から幅広い参加がなされてきている。

「精神医学」への手紙

Letter—ギランバレー症候群患者の性格傾向と機能予後

著者: 大西次郎 ,   横山和正

ページ範囲:P.110 - P.110

 ギランバレー症候群(GBS)の急性期にある患者さんにとり,闘病意欲のあることは,むしろ病気自体の自然経過に負の作用をもたらすのではないかと,本誌で以前推察しました1)。その後,類似のエピソードを聴取する機会もあり,GBSの治癒を遷延させる要因の1つとして,特定の性格傾向が挙げられるのではないかと考えました。このことから,今回一定の条件を満たすGBSの患者さんの協力を得て,性格分析を目的とした検査を行いました。
 対象は過去4年間に四肢の運動機能訓練目的にて当院に入院したGBSの患者さんで,以下の要件すべてを満たした8例のうち,追跡可能であった5例です。①発症4か月を経てなお両上肢末梢の筋群で抗重力運動が不可能であり,②急性期に血漿交換ないし大量免疫グロブリン療法を施行されておらず(ステロイド使用は可),③末梢刺激による誘発筋活動電位検査により軸索型GBSではないと考えられた例。各人に調査の目的を説明し同意を得た上,東大式エゴグラム2)を施行しました。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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