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研究と報告
文献概要
【抄録】我々がこれまでに経験した音楽性幻聴の5例について述べた。4例は難聴者にみられたもので,1例は精神分裂病者の音楽性幻聴である。難聴者4例の音楽性幻聴はいずれも老年期に発症しており,いずれも耳鳴を持っていた。精神分裂病の1例は20歳頃に発症し,音楽性幻聴のほかには難聴も耳鳴もなかった。これらの症例から,難聴者では,(難聴という)感覚遮断,耳鳴,加齢に伴う脳の脆弱性や機能変化が音楽性幻聴の発症に与っていると考えられた。また,精神分裂病者の例ではその疾病過程において機能的感覚遮断が起きているのではないかと推論した。
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