文献詳細
特集 精神医学における分子生物学的研究
文献概要
■はじめに
近年,精神科領域においても分子生物学的研究が盛んに行われるようになり,いくつかの疾患では遺伝因子の実体がDNAレベルで探索されている。こうした趨勢の中で,ナルコレプシーの分子生物学的研究は,(1)元来ナルコレプシーが「睡眠覚醒リズムの障害とREM睡眠の障害」という2つの基本的な障害を持つ,均一性の高い独立した疾患単位として認められている上に,(2)疾患感受性遺伝子のうち最も重要なものが,人間の全遺伝子の中で最も分子生物学的研究が進展している部位の1つであるHLAクラスII領域にあることが判明しており,さらに(3)動物モデルが確立されていて(犬ナルコレプシー),動物モデルの分子生物学的研究も進められている,というユニークな特徴を持っている。ナルコレプシーの分子生物学的研究を通して睡眠覚醒リズムやREM睡眠の統御機構が明らかになり,さらにはナルコレプシーにおける研究が他の精神疾患の分子生物学的研究のモデルとなることが期待されているゆえんである。
本稿では,まず①HLAクラスⅡ抗原の構造と機能に関する近年の研究成果を紹介し,②HLAと疾患感受性の関連についての最近の知見を説明した上で,③ナルコレプシーの分子生物学的研究の成果と今後の課題について述べる。
近年,精神科領域においても分子生物学的研究が盛んに行われるようになり,いくつかの疾患では遺伝因子の実体がDNAレベルで探索されている。こうした趨勢の中で,ナルコレプシーの分子生物学的研究は,(1)元来ナルコレプシーが「睡眠覚醒リズムの障害とREM睡眠の障害」という2つの基本的な障害を持つ,均一性の高い独立した疾患単位として認められている上に,(2)疾患感受性遺伝子のうち最も重要なものが,人間の全遺伝子の中で最も分子生物学的研究が進展している部位の1つであるHLAクラスII領域にあることが判明しており,さらに(3)動物モデルが確立されていて(犬ナルコレプシー),動物モデルの分子生物学的研究も進められている,というユニークな特徴を持っている。ナルコレプシーの分子生物学的研究を通して睡眠覚醒リズムやREM睡眠の統御機構が明らかになり,さらにはナルコレプシーにおける研究が他の精神疾患の分子生物学的研究のモデルとなることが期待されているゆえんである。
本稿では,まず①HLAクラスⅡ抗原の構造と機能に関する近年の研究成果を紹介し,②HLAと疾患感受性の関連についての最近の知見を説明した上で,③ナルコレプシーの分子生物学的研究の成果と今後の課題について述べる。
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