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特集 精神医学における分子生物学的研究
文献概要
■ハンチントン病(Huntington's disease;HD) ハンチントン病(HD)は,常染色体優性遺伝を示す神経変性疾患である。白人での頻度は約10万人に4〜10人であるが,日本人では100万人に0.5人ほどと推定され,稀な疾患である。典型的には,中年期以降に発症し,舞踏病などの不随意運動,人格変化,妄想などの精神症状,痴呆を主症状とし,進行性の経過をとり,約10〜20年ほどで寝たきり状態となり,感染症などで死に至る。若年で発症する場合には,筋固縮と寡動が主体となり,進行も早く若年型(juvenile form)といわれる1)。現在のところ,抜本的な治療法はない。臨床遺伝学的には,世代を経るたびに発症年齢が若年化する現象(表現促進現象;anticipation)が知られており,特に父親から病気を受け継いだ場合の発症は,著明に若年化する(paternal bias)。病理学的には,病変は中枢神経系に限局している。特に線条体(尾状核,被殻)における中型有棘神経細胞(GABA作動性神経細胞)の脱落とグリオーシス,大脳皮質第III IV,VI層の神経細胞脱落が神経病理学的所見の主体である。脳全体の萎縮もみられる。生化学的には線条体におけるGABA,substance P,enkephalinの低下が認められているが,神経変性に直接結びつく生化学的変化は知られていない。
最近,HD遺伝子変異の同定に伴い,神経変性の分子機序がHD遺伝子を中心に活発に研究されている。本稿では,HD遺伝子およびHDの神経変性機序についての研究を概説したい。
最近,HD遺伝子変異の同定に伴い,神経変性の分子機序がHD遺伝子を中心に活発に研究されている。本稿では,HD遺伝子およびHDの神経変性機序についての研究を概説したい。
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