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文献詳細

雑誌文献

精神医学38巻11号

1996年11月発行

特集 精神医学における分子生物学的研究

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症の分子生物学的研究

著者: 上野修一1 山内紀子2 佐野輝1

所属機関: 1愛媛大学医学部神経精神医学教室 2誓生会山内病院

ページ範囲:P.1197 - P.1201

文献概要

 遺伝性歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(Hereditary Dentatorubral-Pallidoluysian Atrophy;DRPLAと省略)は,1982年に内藤と小柳が報告した常染色体優性遺伝性疾患で,てんかん発作,ミオクローヌス,小脳失調,舞踏病アテトーゼ運動,知能障害などが複雑に混じり合った臨床症状を呈し,これらの症状内容は世代によって著しく異なる10)。画像検査では,第4脳室の拡大を伴う小脳萎縮,中脳水道の拡大,被蓋部に特に著しい脳幹萎縮を呈する。脳波では,進行性ミオクローヌスてんかん症候群を呈する若年型においては,全例に脳波上棘徐波複合などのてんかん波形が出現し,光刺激で突発波が著しく誘発される。病理学的に歯状核赤核系および淡蒼球ルイ体系の変性萎縮が認められるため,上記病名が一般的であるが,報告者の名前をとって内藤・小柳病とも呼ばれる。この疾患は日本人に頻度が高い疾患で,日本では全脊髄小脳失調症例の2.5%を占め,その発症率は人口100万人当たり1.1人といわれる2)。1994年に,日本の2つのグループによってDRPLAの病因遺伝子が明らかにされ5,8),DRPLA患者では第12染色体短腕に存在する病因遺伝子のCAG三塩基が不安定に伸張していることが明らかになった。DRPLAについては,すでに辻ら15)による遺伝子異常の発見の経緯や内藤9)による臨床症状についての総説があるが,今回,DRPLAの精神症状を含めた臨床症状と遺伝子異常との関係を我々の経験した1家系で説明しながら,この疾患の分子遺伝学的理解を深めたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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