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文献詳細

雑誌文献

精神医学38巻11号

1996年11月発行

短報

がん患者の適応障害に関する検討

著者: 吉村靖司1 岡本泰昌1 末田耕一1 高見浩1 日域広昭1 大森信忠1 岡村仁2 内富庸介3 山脇成人4

所属機関: 1国立呉病院精神科 2国立がんセンター中央病院精神科 3国立がんセンター研究所支所精神腫瘍学研究部 4広島大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.1231 - P.1234

文献概要

 がん患者が陥りやすい心理状態として,病名や予後が告知されている場合には死に対する不安,絶望感から来る抑うつ,二次的な心気症状,告知されていない場合には上記のものに加えて,がんであるかいなかという不安,真実を告げず避けようとする周囲の人間に対する疑念,孤立感,怒りなどがあると考えられる。またがん治療に際しては,がんの告知,濃厚な治療,再発への恐怖,身体機能の喪失,再発の告知,死にゆく過程などによりしばしば感情の激しい動きを伴う場面が認められることが報告されている9)。Derogatisら4)は,がんに対処する時に50%は可逆的な通常反応をする一方,30%は抑うつ/不安症状を伴う適応障害を経験すると述べている。これらのことからがん患者は常に適応障害発症の高い危険性を有していると考えられる。
 当院精神科では1989年よりリエゾンプログラムを導入し,各病棟スタッフの精神医学に対する関心を高めるとともに,がん患者に積極的にかかわっていくことを試みてきた10,11)。そのなかで,依頼されたがん患者の精神科診断のうち,適応障害はせん妄に次いで高い比率を示し8),その対処が重要であると思われた。しかし,がん患者の適応障害を中心に検討した報告は我々の知るかぎり見当たらない。そこで今回はがん患者に合併する適応障害とその臨床的特徴について検討を行ったので報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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