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文献詳細

雑誌文献

精神医学38巻12号

1996年12月発行

文献概要

研究と報告

アルツハイマー病患者と描画

著者: 武内広盛1 柳沢勝彦23 西沢芳子1

所属機関: 1国立療養所犀潟病院精神科 2新潟大学脳研究所神経内科 3現:国立療養所中部病院

ページ範囲:P.1257 - P.1264

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 【抄録】アルツハイマー病(AD)に罹患した58歳の男性画家の臨床経過と描画の変化を観察した。これまでADに罹患した画家の描画や,絵画の経時的変化の報告はない。本例は記憶障害,失名詞,反響言語・動作,失見当識,構成障害,観念失行などADに特徴的な症状を示した。ADの悪化は,本症例の絵画に,構成と配色の“漸次的単純化”をもたらし,要素的絵画構成への解体過程を示した。しかし,テストで確認した構成行為の障害が高度化しても,絵画構成の2要因のうち,生得的要素の強い巧緻性の解体にとどまり,熟練により会得した技巧と技術は保たれていた。これは画家の絵画が,「手続き記憶」を基礎に描かれていることを示唆するものである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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