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文献詳細

雑誌文献

精神医学38巻12号

1996年12月発行

文献概要

シンポジウム 痴呆の薬物療法の最前線—向知性薬の臨床と基礎

神経細胞Ca2+チャンネルに対する向知性薬の賦活作用—神経生理学の立場から

著者: 吉井光信1

所属機関: 1東京都精神医学総合研究所神経生理研究部門

ページ範囲:P.1329 - P.1335

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 新しいタイプの脳機能改善薬の1つに向知性薬(nootropics)と呼ばれる薬物群があり,その代表的なものは環状GABA構造(pyrrolidone)を持つ2-oxopyrrolidine酢酸誘導体(racetams)である2〜4,7)。最初に開発されたのがpiracetamであり,これを原型としてoxiracetam,aniracetam,nebracetam,pramiracetam,nefiracetamなどの新薬が続々と開発されてきた。これらの薬物は様々な実験パラダイムで学習・記憶を改善することが示されてきたが,その作用メカニズム解明の鍵はいまだに見つかっていない4,20,22)
 向知性薬は脳内の神経伝達を促進するとの知見が数多くあり,特にグルタミン酸作働性,コリン作働性,ドーパミン作働性・GABA作働性の神経伝達の促進が示唆されている4)。また,記憶や学習のモデル系として知られる海馬において向知性薬はシナプス伝達の長期増強(LTP)を強めることも知られている4,23)。このような向知性薬による神経伝達の増強は,より多くの伝達物質が前シナプス終末部より遊離されることにより生ずる場合16)と,伝達物質に対する応答が後シナプス神経細胞で強まることにより生ずる場合8,9,21,24)が考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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