icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学38巻2号

1996年02月発行

文献概要

「精神医学」への手紙

Letter—Sleep disorders medicineの立場から—戸島論文に対するコメント

著者: 谷口充孝1 立花直子2 岡靖哲3 杉田義郎4

所属機関: 1大阪回生病院精神神経科 2京都大学医学部脳病態生理 3公立豊岡病院神経内科 4大阪大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.223 - P.223

文献購入ページに移動
 戸島氏らによる「睡眠時無呼吸症候群および精神遅滞を伴ったPierre Robin症候群の1症例」(本誌37:1079-1083, 1995)は,睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome;SAS)が,睡眠障害を専門としない精神科医にも認知されるようになってきたという点で歓迎されるべきことだと思います。Pierre Robin症候群などの種々の頭蓋顔面奇形を持った小児にSASが合併することは知られており2),外科的治療やnasalCPAPなどの治療効果も報告されています1,3)。SASの診断は典型例では比較的容易ですが,重症度の評価や治療には多くの診療科(耳鼻科,呼吸器内科,歯科口腔外科,形成外科など)との連携が必要となります。しかし,残念ながら,睡眠医学が確立していない日本では,他科との連携ができず適切な治療を行うのが困難なのが現状だと思います。こうした問題点を認識した上で,戸島氏らの報告について睡眠障害の治療を目指している立場から,若干のコメントをさせていただきたいと思います。
 症例ではSASの診断にアプノモニターが使われています。アプノモニターはSASのスクリーニングには有用ですが,SASの重症度や治療の必要性を決定することができません。睡眠内容,SaO2の低下を評価するためにパルスオキシメーターを併用した終夜睡眠ポリグラフ検査が必要です5)。また,SASによって深睡眠が減少し,深睡眠時に出現する成長ホルモンのsurgeが障害されるために小児のSASでは身体発育障害が生じ,治療によって著しく改善することが報告されています4)。この意味でも終夜睡眠ポリグラフ検査で睡眠内容を把握することが重要です。なお,症例ではSASの臨床症状によって日中の活動に支障を来していることからも,短期的にはnasal CPAPを,長期的には形成外科的手術などの治療を考えていくことが望まれます。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら