文献詳細
文献概要
巻頭言
脳とこころの世紀
著者: 高橋清久1
所属機関: 1国立精神・神経センター武蔵病院
ページ範囲:P.342 - P.343
文献購入ページに移動 21世紀を迎えるまであと5年足らずである。新しい世紀に脳とこころの機構がどの程度まで解明されるであろうか。言い換えれば科学的認識として脳機構とこころの働きがどこまで理解されるだろうか。さらに言えば我々精神医学者としてもっとも関心のある,精神疾患または精神障害を克服し,こころの健康を高めるために役立つための,脳とこころの機構の解明がどこまでなされるであろうか。
脳機構の解明に関しては,今日の神経科学の発展をみれば21世紀にそれが成就される可能性は高いであろう。一方,喜怒哀楽,思いやり,羞恥心,美的感覚といった日常のこころの機能から,社会規範や道徳規範,価値観や思想,あるいは哲学・文学・芸術などに現れるこころの働きに関するこころの機構のすべてが解明されるには次の百年では無理かもしれない。しかし,病気としてのこころの問題が来世紀中に解決される可能性は高いのではなかろうか。すなわち,21世紀には脳機構が解明され,こころの働きのメカニズムがより明らかになり,少なくとも精神疾患の成因が解明され,予防法が確立されるものと考える。また,そうする使命が我々およびそれに続く精神科医にはあるであろう。その意味から21世紀を脳とこころの世紀として位置づけたい。
脳機構の解明に関しては,今日の神経科学の発展をみれば21世紀にそれが成就される可能性は高いであろう。一方,喜怒哀楽,思いやり,羞恥心,美的感覚といった日常のこころの機能から,社会規範や道徳規範,価値観や思想,あるいは哲学・文学・芸術などに現れるこころの働きに関するこころの機構のすべてが解明されるには次の百年では無理かもしれない。しかし,病気としてのこころの問題が来世紀中に解決される可能性は高いのではなかろうか。すなわち,21世紀には脳機構が解明され,こころの働きのメカニズムがより明らかになり,少なくとも精神疾患の成因が解明され,予防法が確立されるものと考える。また,そうする使命が我々およびそれに続く精神科医にはあるであろう。その意味から21世紀を脳とこころの世紀として位置づけたい。
掲載誌情報