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短報
HIV感染後むしろ精神症状が安定した血友病A,分裂病型人格障害の1例
著者: 岸本年史1 田原宏一1 川端洋子1 鳴吉徳人1 井川玄朗1 河崎則之2
所属機関: 1奈良県立医科大学精神医学教室 2国立療養所福井病院
ページ範囲:P.427 - P.429
文献概要
HIV(human immunodeficiency virus)は,後天性免疫不全症候群(AIDS)を惹起する。HIV感染者には不安や抑うつなどの心因性の精神症状の合併が多いとされていたが,これらは当初考えられていたよりも少なく,最近の報告では,抑うつは4%から14%と報告されている3)。筆者らのAIDS発症後に不安,抑うつから昏迷状態を呈した1例の報告4)以外には,本邦での精神科領域のHIV感染後の精神症状についての報告は極めて少ない。今回筆者らは,精神病様症状を呈したがHIV感染により,世界没落体験などの症状が消失し,むしろ精神的に安定し現実的な人格の再構成をもたらしたと考えられる血友病の人格障害の症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。
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