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特別寄稿
精神医学におけるシステム論の意義(第1回)
著者: 花村誠一2
所属機関: 1 2東京医科歯科大学神経精神医学教室
ページ範囲:P.435 - P.442
文献購入ページに移動 現代の精神医学では,実に多様な方法的手がかりが過剰に供給される。Tellenbach(1987)は精神医学をまさに「方法のカメレオン」と呼んだ。その結果,統合への強い要請が生じる。これは治療実践にも,研究戦略にも当てはまる。
治療の領域では,この要請は,一方における治療的介入の遂行可能性の増大と,他方における次のような不安の増大との乖離に由来する。つまり,表面的で短期間だけ作用する戦略では,人間存在全体を見渡す視線が失われるかもしれない,というもっともな不安である。直観はもはやほとんど役に立たないので,全体的な構造,例えば「オートポイエティック」な構造が,操作的なやり方でも扱いうるのかどうかは疑わしい注1。
治療の領域では,この要請は,一方における治療的介入の遂行可能性の増大と,他方における次のような不安の増大との乖離に由来する。つまり,表面的で短期間だけ作用する戦略では,人間存在全体を見渡す視線が失われるかもしれない,というもっともな不安である。直観はもはやほとんど役に立たないので,全体的な構造,例えば「オートポイエティック」な構造が,操作的なやり方でも扱いうるのかどうかは疑わしい注1。
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