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文献詳細

雑誌文献

精神医学38巻5号

1996年05月発行

特集 精神病理学の方法論—記述か計量か

自殺研究における多数例研究の意義

著者: 張賢徳12

所属機関: 1ケンブリッジ大学精神科 2帝京大学医学部精神科学教室

ページ範囲:P.477 - P.484

文献概要

■はじめに
 「多数例研究」というテーマをいただいたが,その意味が曖昧であるため,この論文における「多数例研究」をまず定義する。第1の要件は,対象が代表性representativenessを有すること。第2に,調査したい情報が質・量ともにできるだけ多く,しかもできるだけ客観性を有すること。第3に,用いる統計手法が要求する対象数を有することである。したがって,その結果は原則として再現性を持つと考えられ,実証研究empiricalresearchの意味に近い。以下では,実証研究で「多数例研究」を代用する。単なる症例報告の数を集めても,極めて稀な疾患でないかぎり,それを「多数例研究」とはみなさない。また,ここでは既遂自殺のみを扱い,自殺未遂は扱わない。
 この論文では,まず自殺の定義と自殺研究の歴史的背景を概観し,1950年代以降興る自殺の実証研究までの流れを述べる。次に,自殺の実証研究手法の中核をなす心理学的剖検psychological autopsyの意義と方法について述べる。そして,実証研究がもたらした成果を概観し,それを基に発展している次の段階の研究について触れる。実証研究(適切な調査方法を備えた「多数例研究」)の重要性が理解されることを期待している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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