文献詳細
特集 精神病理学の方法論—記述か計量か
文献概要
■はじめに
統計的な手法を用いた多数例研究は,他の諸科学におけるのと同様,近年の精神医学においても,主流となりつつある。こうした潮流の必然性と意義については筆者もすでに述べたことがあるし5),またこの特集の別の稿でも触れられるので繰り返さない。本稿で与えられたテーマは,統計的手法による多数例研究の限界について批判的に振り返るということである。
統計などの数学による学問の進歩という点では,経済学などの人文諸学にすでに先例がある。その際に重要なのは,すでに言われてきたことだが数学そのものではなく,数学に代表される論理的思考なのであろう。統計の手続きには当然のことながら限界があり,その足りない点を埋めるためには様々な臨床的な経験を総合しなくてはならない。ここで統計,と言っても意味が広いのだが,本稿で取り上げるのは,無作為標本によって母集団での変数の値を推測する推測的統計である。そのなかでも特に,帰無仮説を用いた仮説検定法について考える。これと並んで,対象データの情報を縮約したり,その相互関係を描出するものとしての統計学についても言及したい。
統計的な手法を用いた多数例研究は,他の諸科学におけるのと同様,近年の精神医学においても,主流となりつつある。こうした潮流の必然性と意義については筆者もすでに述べたことがあるし5),またこの特集の別の稿でも触れられるので繰り返さない。本稿で与えられたテーマは,統計的手法による多数例研究の限界について批判的に振り返るということである。
統計などの数学による学問の進歩という点では,経済学などの人文諸学にすでに先例がある。その際に重要なのは,すでに言われてきたことだが数学そのものではなく,数学に代表される論理的思考なのであろう。統計の手続きには当然のことながら限界があり,その足りない点を埋めるためには様々な臨床的な経験を総合しなくてはならない。ここで統計,と言っても意味が広いのだが,本稿で取り上げるのは,無作為標本によって母集団での変数の値を推測する推測的統計である。そのなかでも特に,帰無仮説を用いた仮説検定法について考える。これと並んで,対象データの情報を縮約したり,その相互関係を描出するものとしての統計学についても言及したい。
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