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文献詳細

雑誌文献

精神医学38巻6号

1996年06月発行

文献概要

展望

ACOA—看過ごされてきた領域

著者: 中山道規1 佐野信也1

所属機関: 1防衛医科大学校精神科

ページ範囲:P.574 - P.586

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■初期の研究
 1.1970年代までの研究
 Nylander43)は229症例を対象として,『アルコール依存症(以下ア症と略記)の父親の子供たち』というタイトルの研究報告を1960年に刊行し,ア症者の子供たちは親からの十分なケアや顧慮を受けていないものが多いということを詳記した。ア症者の営む家庭に生まれ育つ子供たち(Children of Alcoholics;COA)は,心的不全や社会適応問題による症状をしばしば呈し,しかも通常それらは身体症状の形で現れるため,彼らが医療機関を訪れ広範な身体医学的検査を受けることはあっても,本来必要なメンタル・ケア・サービスを提供するクリニックへの来所に至ることは稀であることをもNylanderは指摘している。彼はストックホルムのChild Guidance Clinicsを訪れた2,000例を超えるケースをプロスペクティヴに追跡研究し,10年目11),20年目44)の転帰報告も行っている。
 Nylanderの研究を承け,その後20年間の『ア症の父親の子供たち』の社会適応や健康状態を調査したRydelius49)の報告では広範な文献総覧も行われている。1970年代までの研究報告のRydeliusの総括によると,アルコール乱用のある家庭で育った子供は,種々の心身の障害や学校不適応の問題を発現させうる養育怠慢neglectにさらされる危険群と考えられ,長じてからは反/非社会性と関連するア症に陥ることも稀ではないということになる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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