資料
乳幼児を育てる母親の精神保健—電話相談事例の検討から
著者:
小野善郎1
桑原義登1
吉益文夫2
所属機関:
1和歌山県子ども・障害者相談センター
2和歌山県立医科大学神経精神医学教室
ページ範囲:P.647 - P.650
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子どもを出産した母親では,産褥期にはマタニティー・ブルーズや産後うつ病,産褥精神病などがしばしば認められ,母子精神保健の重要な問題として知られている。また,乳幼児期の子どもと母親をめぐる問題としては,近年,児童虐待が注目されているが,さらに,現代の核家族化,女性の就労形態の変化や少子化などによる家庭環境・育児環境の変化を背景として,育児に対し不安やいらだちを感じたり,様々な困難に悩む母親も増加してきている。深津ら1)は,妊娠・出産しながらも母親として適切に機能できず,育児の役割を果たすことについて苦痛や困難を訴えたり,子どもを虐待する母親たちを「育児困難を訴える母親」と定義し,そのような母親の問題のタイプとして,身体的虐待や保護の怠慢・養育拒否など児童虐待に相当する行為や母親の抑うつ感や不安感などを挙げている。
このような子どもを育てている母親に対する支援策として,厚生省は1988年より都道府県中央児童相談所および政令指定都市児童相談所において「家庭支援相談等事業」を実施することとし4),和歌山県においては1991年10月1目より和歌山県中央児童相談所(1995年10月1日より「和歌山県子ども・障害者相談センター」に統合)において「子どもと家庭のテレフォン110番」を開設した。