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文献概要
山では天候判断の誤りが遭難に直結し命取りとなりうる。悪天候の前に一過性の晴天がみられることがあり,「偽りの快晴」3)や「疑似晴天」2)と呼ばれる。この時に頂上への思いに引かれ,登山を続ければ遭難の危険が大となる。うつ病経過中にも「偽りの快晴」が起こりうる。患者のうつ状態が急速に軽快し,明るさと元気を取り戻した時,患者も家族もそして主治医も,それが本格的な晴天と信じたくなるのが人情ではなかろうか。本稿では「偽りの快晴」と呼べる一過性の軽快の後に自殺に至ったうつ病の1例を粗描し,若干の考察を加えたい。
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