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文献詳細

雑誌文献

精神医学38巻7号

1996年07月発行

文献概要

展望

小児期の精神分裂病

著者: 弟子丸元紀1 樋口康志2

所属機関: 1国立療養所菊池病院 2熊本大学医学部精神神経科学教室

ページ範囲:P.686 - P.698

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 小児期の精神分裂病(以後は分裂病と記す)の臨床に関して,歴史的にいくつかの時代的流れがある。1943年にKanner27)が「感情的接触の自閉的障害」の論文を報告し,「早期幼児自閉症(earlyinfantile autism)」と命名し,分裂病の最早発型と考えたいと述べている。Bender9)は,分裂病を広く定義し,児童期の分裂病は遺伝的な脆弱性を持っており,個体が胎生期から早期幼児期までの間に作用するストレスに対して起こす早期の代償不全,すなわち成熟の遅れ(maturational lag)を提唱した。また,Kolvin31,32)は小児の示す精神病的症状の発現は,3歳以前を幼児期発病型infantlile psychosis(IP)とし,大部分が自閉症であること,また5歳以降を年長児期初発型lateonset psychosis(LOP)とし,その少数例のほとんどが成人型破瓜病であったと報告し,自閉症と早期発病の分裂病を異なるものとした。その後,1972年にRutter61)は多くの幼児自閉症は2歳半(30か月)以前に発症のピークがあり,分裂病は児童期後期と思春期に発症のピークがあることを指摘し,また,診断名も分裂病で十分であり,形容詞として小児期(childhood)はつける必要のないことを指摘した。1980年に改訂されたDSM-III2)からは幼児自閉症は発達障害であり,成人型の分裂病とは全く別のカテゴリーであることが示され,別の項目に記されるようになった。しかし,その後,Watkins(1988)73)はDSM-Ⅲ2)の分裂病の診断基準を満たしている10歳未満発症の12歳以下の症例について家庭や学校の記録,地域幼児指導センター記録を元に分析し,その中に3〜8歳に小児期発症の広汎性発達障害の症状を認めたことを報告している。または成人した自閉症の臨床からも,思春期・成人期になって分裂病の診断基準を満たす症例が認められた報告もなされている30,34)。これらの自閉症と分裂病との関連性の再考が指摘され,DSM-Ⅳ3)には「自閉性障害や他の広汎性発達障害の既往歴があれば,精神分裂病の追加診断は,顕著な幻覚や妄想が少なくとも1か月(治療が成功した場合は,より短い)存在する場合にのみ与えられる」という項目が加えられている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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