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文献詳細

雑誌文献

精神医学38巻8号

1996年08月発行

文献概要

研究と報告

Flumazenil投与により一過性覚醒効果が認められた肝性脳症の1症例

著者: 國友充康12 浜田芳人1 太田保之3

所属機関: 1対馬いづはら病院精神科 2現,長崎大学医学精神科 3長崎大学医療技術短期大学部

ページ範囲:P.843 - P.847

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 【抄録】flumazenil投与により,意識障害が改善した肝性脳症の1症例を報告した。症例はC型肝炎による肝硬変が認められ,発症時,振戦,両側Babinski反射陽性,高アンモニア血症などより,肝性脳症Ⅱ度と判断された。flumazenil投与後,第1病日は10分後に,第2病日は30分後に,2〜3時間の持続ではあるが完全覚醒が認められた。肝性脳症のGABA/BZ仮説に基づくflumazenilによる治療は,欧米では多数試みられ,その有効性が証明されている。肝性脳症において,初期では,ベンゾジアゼピンレセプター(BZR)密度の増加が報告されたが,現在は否定的な見解が多く,最近では内因性のBZRリガンドの増加が証明され,活発な論議がなされている。本症例の治療経過は,GABA/BZ系が肝性脳症の成因に関与している可能性を支持するものであり,flumazenilが,肝性脳症の有力な治療薬となる可能性を示唆したものであると考える。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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