研究と報告
強迫性障害患者の人格障害とclomipramineの反応性について
著者:
松永寿人1
切池信夫1
永田利彦1
宮田啓1
西浦竹彦1
山上栄1
所属機関:
1大阪市立大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.849 - P.856
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【抄録】29例の強迫性障害患者にStructured Clinical Interview for DSM-Ⅲ-R Axis Ⅱ(SCID-Ⅱ)を施行して,人格障害のclomipramine反応性への影響を検討した。人格障害は14例(48.3%)に診断され,その内訳は回避性人格障害が最も多く6例(20.7%)で,依存性,妄想性,強迫性,分裂病型,自己愛性の順で多く診断された。全対象患者にはclomipramineによる薬物療法を行い,治療前と6か月後にJY-BOCS(Japanese version of the Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale)を用いて,強迫症状の重症度と,その変化を評価した。中断・脱落例を除外した25例の,平均98.2mgのclomipramine投与によるJY BOCS総得点の改善率は,平均33.3%であった。しかし人格障害合併群では21.1%と,人格障害を有さない群の44.6%に比し有意に低値となり,特にcluster AやBの人格障害を合併した患者は反応が悪かった。このため,これらの人格障害を合併すると,よりclomipramine治療に対して抵抗的で,難治と考えられた。