精神医学38巻9号

1996年09月発行

巻頭言

痴呆性疾患の臨床診断について

著者： 柄澤昭秀¹

所属機関： ¹日本社会事業大学大学院

ページ範囲：P.908 - P.909

文献概要

　20年以上前のことになるが，ある精神科医がピック病と診断した事例が剖検の結果，片側半球の梗塞だったという話を聞かされ大変驚いた。ピック病の臨床症状にはかなり特徴があるので，それを脳梗塞と間違えることはちょっと考えられない。そこでそのカルテを見せてもらった。その記載を読むとその病像はまさに典型的なピック病のそれであり，精神科医であればそう診断するのが当然だとそのことは納得できた。まだCT検査が普及していなかった頃の話であり，今とはもちろん事情が違うが，筆者は今もこの事例のことが忘れられない。それから痴呆性疾患の臨床診断に非常に慎重になった気がする。