文献詳細
文献概要
紹介
感情障害と家族の感情表出(Expressed Emotion)
著者: 三野善央1 津田敏秀1 田中修一2 下寺信次2 松岡宏明1 茂見潤1 井上新平2
所属機関: 1岡山大学医学部衛生学教室 2高知医科大学神経精神医学教室
ページ範囲:P.987 - P.995
文献購入ページに移動家族の感情表出(Expressed Emotion;EE)と精神疾患の経過との関連についての研究は分裂病を中心に進められ,その関連,ひいては因果関係もほぼ定着したと考えられている16)。その知見に基づいて,家族への心理社会的介入による分裂病の再発予防の実践が試みられている14,23)。一方,感情障害の経過と家族のEEとの関連に関しては,初期のVaughnとLeffの研究29)においてその関連が示されて以来,ほとんど注目を集めてこなかった。しかしながら,感情障害,とりわけうつ病は社会的環境の影響を受けやすい疾患である3)と言われており,EE研究の視点からの取り組みが求められている。
本論で,うつ病をはじめとする感情障害をEE研究の立場から取り上げる理由は次の通りである。第1に有病率が高いことである。例えば,うつ病の一般人口中での時点有病率は,男性で1.8〜3.2%,女性で2〜9.3%と言われており7),また大うつ病の生涯有病率は3.7〜6.7%に達するとも言われている24)。プライマリケア場面でもその時点有病率は高く21),いかにしてスクリーニングし,有効な治療を行うかという検討がなされている4)。また,うつ病による自殺7)や経済的損失5)も大きな問題となっている。第2には,うつ病は社会的環境の影響を強く受ける疾患である3)と言われており,家族環境の1つの表現形であるEEの影響は無視できないと思われることである。
本論の目的は,うつ病をはじめとする感情障害と家族のEEに関してのこれまでの研究報告を総括し,それを評価し,今後の研究のあり方,我が国におけるこの領域の研究の可能性を論ずることである。
掲載誌情報