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難治性うつ病の治療—我が国における現状と治療アルゴリズム
著者: 井上猛1 小山司1
所属機関: 1北海道大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.6 - P.14
文献購入ページに移動■はじめに
1959年にimipramineが臨床に導入されて以来,モノアミン酸化酵素阻害剤と多くの三環系・四環系抗うつ薬が我が国の精神科臨床に登場し,現在14種類の抗うつ薬が用いられている。多くのうつ病症例は第一選択の抗うつ薬によって寛解するが,約30%の症例は第一選択の抗うつ薬に反応せず4,21,28),第二,第三の抗うつ薬への変更を余儀なくされる。精神病性うつ病ではさらに非反応率は上昇し,三環系抗うつ薬のみの治療に対する非反応率は65〜75%といわれる4)。しかも複数の抗うつ薬を用いても症状が十分に改善せず,数年から十数年にわたって社会生活,家庭生活における活動が困難となっている症例は依然数多く存在する10,12,18,26)。これら非反応者に対する新しい治療の開発は急務となっている。抗うつ薬の際だった臨床的効果が確認され,その作用機序が活発に研究されている反面,抗うつ薬非反応者に関する研究はこれまで十分になされているとはいえない。本展望では難治性うつ病に関するこれまでの研究結果を紹介し,難治性うつ病の治療について,我が国の現状に即して論ずる。
1959年にimipramineが臨床に導入されて以来,モノアミン酸化酵素阻害剤と多くの三環系・四環系抗うつ薬が我が国の精神科臨床に登場し,現在14種類の抗うつ薬が用いられている。多くのうつ病症例は第一選択の抗うつ薬によって寛解するが,約30%の症例は第一選択の抗うつ薬に反応せず4,21,28),第二,第三の抗うつ薬への変更を余儀なくされる。精神病性うつ病ではさらに非反応率は上昇し,三環系抗うつ薬のみの治療に対する非反応率は65〜75%といわれる4)。しかも複数の抗うつ薬を用いても症状が十分に改善せず,数年から十数年にわたって社会生活,家庭生活における活動が困難となっている症例は依然数多く存在する10,12,18,26)。これら非反応者に対する新しい治療の開発は急務となっている。抗うつ薬の際だった臨床的効果が確認され,その作用機序が活発に研究されている反面,抗うつ薬非反応者に関する研究はこれまで十分になされているとはいえない。本展望では難治性うつ病に関するこれまでの研究結果を紹介し,難治性うつ病の治療について,我が国の現状に即して論ずる。
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