文献詳細
研究と報告
文献概要
【抄録】精神分裂病患者に,「聞き慣れたメロディが頭の中に聞こえる」と訴える音楽幻聴が生じた例を報告した。これらの音楽幻聴は,器質的要因・感覚遮断の理論や,加齢による「脳機能の脆弱性」,薬物の副作用といった観点からは説明できず,精神分裂病の疾患経過に応じて言語幻聴に似た症状変化を示し,分裂病像を構成する症状の1つとみなすことが可能であった。その本質は自生思考に近い記憶表象で,軽微な自我障害の表現と考えられた。精神分裂病の初期もしくは安定期の,重篤ではないものの稀ではない症状として考察を加え,音楽幻聴への関心を促した。
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