短報
病的多飲水患者でみられた膀胱の拡張
著者:
不破野誠一1
北村秀明1
伊藤陽2
松井望2
中山温信2
所属機関:
1国立療養所犀潟病院精神科
2新潟大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.85 - P.87
文献購入ページに移動
これまでに「慢性の精神障害に伴う水分の過剰摂取」(psychiatric polydipsia;以下PPと略)に関する報告は多くみられるが2,7),長期間続くこの病態に伴って当然生じてくると考えられる尿路系の異常についての報告は稀である1,5)。わずかにBlumらが10名のPP患者中の5名において,膀胱の拡張,尿失禁,水腎症,腎不全などの広汎な尿路系の異常を見いだしているにすぎない1)。そしてこのような広汎な尿路系の異常を呈する前段階として膀胱の拡張が発現すると思われるが,PP患者における膀胱の拡張の頻度についても知られていない。我々は国立療養所犀潟病院において,1989年より1995年までの間,精神科病棟入院患者1,315人を対象として,「多飲水関連行動および症状」を指標とするスクリーニング法3)により,精神科入院患者のPPについて調査してきたが11),このうち68人(5.2%)がPPを合併していると診断されている。この中の1人において,残尿量が多いことから尿路系の異常を疑って骨盤部CTを行ったところ,著明な膀胱の拡張が見いだされた。そしてこの症例に対して行った泌尿器科的手術治療の有用性についてはすでに報告した4,8)。今回はこの症例以外にもPPを呈する患者では膀胱の異常が高率に存在するのではないかと考え,骨盤部CT検査による予備的調査を行ったので,その結果について報告する。