研究と報告
簡便なリチウム投与量予測式の作成と有用性の評価
著者:
寺尾岳1
鈴木尊志1
吉村玲児1
大森治1
白土俊明1
山本純史1
渡辺治夫1
新開隆弘1
上野麻理子1
高橋法人1
行正徹1
阿部和彦1
所属機関:
1産業医科大学精神医学教室
ページ範囲:P.1203 - P.1207
文献購入ページに移動
【抄録】簡便で有用なリチウム投与量予測式を作成するために,リチウム服用患者70名を対象に,治療形態,性,年齢,体重,腎機能,抗うつ薬使用の有無,リチウム投与量,リチウム濃度を調査した。そして,リチウム投与量を従属変数,他の要因を独立変数としてステップワイズ法による回帰分析を行ったところ,リチウム投与量=100.5+752.7×[希望するリチウム濃度]-3.6×[年齢]+7.2×[体重]-13.7×[BUN]という回帰式が得られた。この式の決定係数は0.63であり,同様の手法で作成されたZetinらの予測式における決定係数0.45と比較すると,より精度が高いと考えられた。また,Zetinらの予測式は7つの項から成り立っているのに比較して,今回の予測式は5つの項から成り立っており,より簡便と考えられた。さらに,この式の有用性を検討するために,別のリチウム服用患者23名を対象に,式の予測誤差を検討したところ,平均予測誤差は-49mgとわずかで,17名(74%)の患者は予測投与量と実際の投与量の違いが±200mgの範囲内におさまっていた。他方,同じ対象にZetinらの予測式を用いた場合には,平均予測誤差は-330mgと有意に大きく,予測投与量と実際の投与量の違いが±200mgの範囲内におさまっていたのは10名(43%)にすぎず,今回作成した予測式の有用性が示された。