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文献詳細

雑誌文献

精神医学39巻12号

1997年12月発行

文献概要

展望

経過からみたTourette症候群の臨床特徴

著者: 太田昌孝1 金生由紀子2

所属機関: 1東京学芸大学附属特殊教育研究施設 2東京大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.1252 - P.1264

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■はじめに
 Tourette症候群(DSM-IV3)ではTourette's disorder,ICD-1068)ではCombined vocal and multiple motor tic disorderまたはde la Tourette's syndrome。以後はTSと略す)は,多様な運動チックと1つ以上の音声チックが1年以上続くチック症である。1825年にItardが第1例を報告したが,1885年にGilles de la Touretteが9例について詳細な報告を行ったので,彼にちなんでGilles de la Tourette症候群と呼ばれるようになった。その後,進行性であり,痴呆や精神病になり予後が不良であるという誤った考えが半世紀以上にわたって信じられていた。
 1950年代頃から実証的な研究が始まり,1960年代にハロペリドールが有効であることが発見されるとともに,様々な神経生物学的研究が行われるようになり,最近では,遺伝,脳画像,神経薬理などの分野の研究が特に盛んである。同時に,臨床特徴に関する知見も蓄積されてきており,チック症状のみならずしばしば合併する症状についても長期の経過が明らかになってきている。この合併症状については,治療的な観点からも,遺伝学的研究をはじめとして病因・病態を究明しようとする観点からも注目が高まっている。
 本論では,まずTSの概念と診断基準は経過や予後に密接に関連しているので,それらの変遷について検討する。次いで,TSにおけるチック症状と合併しやすい精神医学的状態とについて,どのような経過で推移するかを検討し,最後にTSの転帰と予後の予測について検討する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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